協会長ステートメント

会長 西澤 敬二


(2018.9.20)

 本年6月に協会長に就任して以降の主な取組みや出来事につきまして、ご報告するとともに所感を申し上げます。

1.はじめに

 「大阪府北部を震源とする地震」、「平成30年7月豪雨」、「平成30年台風21号」、および「平成30年北海道胆振東部地震」をはじめとした自然災害が相次いで発生しました。お亡くなりになられた方々に、謹んで哀悼の意を表しますとともに、ご遺族および被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。
 損害保険業界といたしましては、保険金の迅速なお支払いに向けて、業界を挙げて取り組んでおります。被災された皆さまが一日も早く日常生活を取り戻せますよう心から祈念いたします。

2.これまでの取組みについて

(1)持続可能な社会実現への貢献(SDGs達成への貢献)に向けた取組み

ア.取組み全般の方向性

 少子高齢化、気候変動、デジタル技術の進展をはじめとする環境変化に伴い、損害保険業界に期待される役割は拡大しており、持続可能な社会の実現に一層貢献することが求められています。第8次中期基本計画を推進していくためにも、業界・協会の取組みをSDGsの観点から再確認するとともに、当協会の行動規範の検証に着手しました。
 そのうえで、協会として注力・深化すべき既存事業や、協会を中心に損害保険業界全体で推進すべき新たな役割発揮に資する取組みについて検討してまいります。
 また、SDGs達成に向けた当協会の取組みを対外的に発信すること、そして2030年を見据えた取組みのあり方に関して議論を深めることを目的に、「SDGsフォーラム(仮称)」を来年1月23日に開催することとしました。

イ.自然災害に対する取組み

(ア)火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実に向けた取組み

 本年7月に「平成31年度税制改正要望」を取りまとめ、関係省庁に要望いたしました。今回の要望では、「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」を重点要望項目として掲げました。損害保険会社には、予測困難な巨大自然災害の発生に備え保険料の一定割合を異常危険準備金として積み立てることが保険業法で義務づけられています。
 しかしながら、昨年の「平成29年7月九州北部豪雨」や「平成29年台風21号」、本年の「大阪府北部を震源とする地震」、「平成30年7月豪雨」、「平成30年台風21号」、および「平成30年北海道胆振東部地震」と自然災害が頻発する中、異常危険準備金の残高は依然として低い水準に止まっています。
 今後も確実に保険金をお支払いしていくためには、同準備金を早期に積み立てる必要があることから、無税積立率を現行の5%から6%に引き上げる措置が不可欠と考えています。要望の実現に向け、関係各方面に対して働きかけを行ってまいります。

(イ)地震保険の普及に向けた取組み

 火災保険への地震保険付帯率は、2017年度末現在で63.0%(前年度末比0.9ポイント増)となりました。首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の発生が懸念される中、自助による経済的備えとして有効な手段である地震保険の一層の普及促進に向けて、8月22日から新たな広報活動を開始しました。特設 WEBサイトでは、地震保険や防災について気軽に学ぶことのできるデジタルコンテンツである「お父さんのための地震ドリル」を掲載しました。また、地震保険を身近に感じられるリアル体験コンテンツである「体験型防災アトラクション」を東京で実施する予定です。

ウ.高齢者等の交通事故防止に向けた取組み

 当協会は、高齢ドライバーや歩行者の事故防止に向けた啓発活動や事故多発交差点の周知活動を全国各地で行っています。このたび、秋の全国交通安全運動期間に合わせて、譲り合いの気持ちを持つことの重要性を説く啓発動画である「SHARE THE ROAD」を公開しました。また、事故の半数以上が交差点付近で発生していることに着目した、累計アクセス数が560万回を超えるWEBコンテンツである「全国交通事故多発交差点マップ」を更新しました。こうしたデジタルコンテンツとともに、啓発チラシや反射材等を活用し、都道府県警察、自治体、マスメディアの皆さまと連携のうえ、取組みを推進してまいります。

(2)技術革新の促進への貢献(Society5.0実現への貢献)に向けた取組み

ア.自動運転技術の進展に関する取組み

 自動運転システム利用中の事故における損害賠償責任について、国土交通省の「自動運転における損害賠償責任に関する研究会」では、レベル0から4までの自動車が混在する当面の過渡期(2020年から2025年頃)においては迅速な被害者救済のため従来の運行供用者責任を維持する考え方が示されました。
 一方で、自動走行が社会に浸透していくためには、自動運転技術の開発・法制度の整備はもとより、消費者の認知や理解、事故時の不安解消などの社会受容性の向上が一層重要になると考えられます。
 こうした背景を踏まえ、一般消費者向けの啓発に係る取組みの一環として、当協会のホームページに特設ページを開設いたしました。
 自動運転の定義・分類を紹介するとともに、現在実用化されているレベル1から2について、運転者による監視を前提としていること、また、安全運転支援システムへの過信等により事故が発生していることをご案内し、安全運転を啓発する内容となっています。

(3)各種課題への取組み

ア.保険金不正請求の防止に関する取組み

 不正請求疑義事案の検知を目的とした「保険金請求歴および不正請求防止に関する情報交換制度」を本年10月に稼働する予定です。本制度では、傷害保険、自動車保険における対人賠償責任保険、人身傷害補償保険などの人保険について従来実施してきた「保険金請求歴情報交換制度」の対象種目を拡大し全種目とするとともに、情報交換を行う項目の充実を図ります。
 当協会では、これまでも保険金不正請求データベースの充実を図るとともに、不正行為関係者のネットワーク分析システム等を活用してまいりましたが、本制度の構築に伴い、一層実効性のある不正請求防止態勢が整うこととなります。

イ.自動車盗難防止に関する取組み

 当協会では、自動車盗難や車上ねらい等に対する防犯意識の啓発を進めており、活動の一環として10月7日(10.7=トーナン)を「盗難防止の日」と定め、2003年から主要各地の街頭で啓発活動を実施しています。本年1月から7月までの自動車盗難認知件数は5,163件と、前年同時期に比べて14.9%減少しましたが、特定の地域では依然として盗難が多発しており、継続的な取組みが重要となります。本年は、曜日の関係から10月5日に、警察や一般社団法人日本損害保険代理業協会と連携し、主要各地の街頭で啓発チラシを配布します。

ウ.新興国市場への各種支援の取組み

 本年9月6日から7日まで、ミャンマー・ヤンゴンにおいて日本国際保険学校(ISJ)の海外セミナーを開催しました。当協会では、東アジア諸地域に対する保険技術協力・交流プログラムとして、1972年から毎年東京でISJを開催しており、1993年からは毎年海外セミナーも開催しています。
 また、ミャンマーに対しては、当協会から支援計画を提示するとともに、本年8月より、独立行政法人国際協力機構(JICA)の専門家として職員を派遣しています。
 各国損害保険市場の健全な発展と成長に向けて、関係省庁・団体との連携の下、引き続き取り組んでまいります。

3.おわりに

 本年4月にスタートした「第8次中期基本計画」について、協会長就任時から「SDGs達成への貢献」と「Society5.0実現への貢献」の2つの観点で着実に取組みを進めてまいりました。
 大規模な自然災害が頻発した本年は、異例ずくめの年として歴史に刻まれることになると考えます。過去のデータに基づく想定、経験則を超えるような災害が、いつどこで発生しても不思議ではないこと、そして常に備えておかなければいけないことをあらためて認識させられました。
 当協会といたしましては、経済的備えとしての保険加入の重要性を広く周知するとともに、地域特性に応じた防災・減災、事故防止に資する取組みを、関係各方面と連携のうえ地道に積み重ねていくことで、安心・安全で持続可能な日本の未来に貢献してまいります。

 引き続き、皆さまのご支援・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

2018年9月 協会長ステートメント